黄昏色の詠使い イブは夜明けに微笑んで

ネタバレがあります。ご注意ください。

君のもとへ続く詠

良かった。部分も多々あったけれど、それ以上に疑問に残る部分があった。シリーズ作品となることが前提で、あえて色々な部分を語らなかったのならばわかるけれど、投稿作品のためそれはないだろう。些か、投げっぱなしな感じがした。残念なのは、誰が主人公かわからないところ。題名になっている片方には存在感がなく、片方は黒い。まあ、些細といえば些細なのだけれど。あと、視点変わりすぎ。まあ、これは、私の記憶力の問題なのかもしれないけれど。少しの文章、というか、1,2ページで目まぐるしく視点やら時系列やらが変わるので、ちょっとついていけない部分があった。しかも、女性陣の口調がほとんど同じなので、更に混乱。加えて、ピンチ→助っ人、というご都合主義。一回これをやられてしまうと、それ以降、何の緊張感もなくなってしまう。というか、一回だけではなかったのだけれど…けれど、序奏は良かった。物語の冒頭としては、これ以上ないぐらいだった。

真精は自分の役目を果たすと消える

ならば、アーマの役目とは何だったのだろうか。普通なら、ネイトの成長を見守るとかなのだろう。けれど、ダメだ。どう考えても、イブマリーがカインツに会うために、ネイトを成長させることを目的としているようにしか、見えない。ネイトとの約束すら、そのための布石にしか、思えない。ところで、イブマリーは夜色名詠の真精を、いつ決めていたのだろうか。

イブマリー。一つ訊いていいかな……君、夜色名詠で何を詠び出したいんだ

ひみつ

おそらく、このときにはもう決めていたと思われるけれど、このときの彼女はまだ、孤独。彼とこうして話すのもせいぜい二回か三回目だろう。という描写があるため、密かに想っていた、ということもないだろう。ならば、自分が存在したという証左を、この世に残すためだろうか。それとも、それはアーマで、カインツと約束した後に、自分を真精にすることを、決めたのだろうか。

それはすなわち、過去の自分が誇っていた偽りの「虹色」だ

ここの件はとても良かった。まあ、五色のヒドラが出てきた時点で、こうなるだろう、とは思っていたけれど、それでも、良かった。そんな名詠士って、いったい何の為にいるんだろうね。そんなの疑問を持ちながら、それに打ち勝つために。ボクの名詠とは、なんだ?それに気付きながら、それを乗り越えるために。変わるために。殻を破るために。約束を、果たすために。過去の自分に、その想いを、放つ。イブは夜明けに微笑んで。一番成長したのは、イブに微笑まれた、その微笑を引き出した、彼なのかもしれない。

色々な感想で見られる綺麗さよりも、イブマリーの黒さの方が印象に残ってしまった。まさに夜色。続刊でこの印象を拭えるようなエピソードがあればいいのだけれど。