トリック・ソルヴァーズ 哀しみの校歌

ネタバレがあります。ご注意ください。

トリック・ソルヴァーズ―哀しみの校歌 (トクマ・ノベルズEdge)

トリック・ソルヴァーズ―哀しみの校歌 (トクマ・ノベルズEdge)

いろんな人に怒られました

と帯に書いてあったけれど、熱烈なミステリ読みではない私としては、知識に乏しいため、どこが怒られたのかよくわからなかった。まあ、若干反則的な結末な訳だけれど、そういうのもあるのか、という感じだ。それでも、許せない人は許せないかもしれない。けれど、むしろ、私が怒りたい部分は、野球部の在り方である。まあ、漫画や小説に出てくる高校野球の間違った知識に対しては、フィクションだと割り切っているので、どうということはないのだけれど。怒るというか、突っ込みどころ満載だった。感想から逸れてしまいそうなため、一つだけ。精神論的な部分は、置いておく。キャプテンのことについて。高校野球では、基本的に投手はキャプテンをやらない。というのも、投手陣と野手陣では練習メニューなど、いろいろな部分が違うため、余程その投手が抜きん出た存在でない限り、キャプテンは野手がやる。まあ、時野はエースで四番のため、抜きん出た存在なので、副キャプテンが野手をまとめてもいいのだけれど、

バラバラの気持ちを一つにまとめる巨大な「輪っか」が欠けている

なんてことを監督が言っている。ならば、やはり野手がキャプテンをやるべきであるし、監督も指名するべきである。まあ、小説の中のキャラメイクの話なので、そんなこと言っても詮無いのだけれど。どこかに、経験者以外に言われると云々、という描写があったので、多少引っかかるところがあったのかもしれない。

とはいえ、そこそこに登場人物のキャラが立っていたので、すらすら読めた。序盤から引っ切り無しに出てくる登場人物の見分けがつくというのは、ありがたい。まあ、何かのテンプレのようだというのは別にして。色々ととんでもないことを口走ることも別にして。とんでもないことと言うと、語弊があるかもしれない。まあ、良く言っても、くさい台詞、としかいえない。悪くは…言わないでおこう。あと、主人公がほとんどパシリのような扱いだった…

トリックについては上述した通り、ふーん、という感じである。「あれ」意外は特にどうという程の事もないものだ。けれど、その、「あれ」を受け入れられるかどうかで、この作品の評価が変わるところでもある。失礼を承知で率直に言う。トリックだけで見たら、西尾維新よりも簡単だ。それでも、西尾維新の作品には、トリック以上のものが詰まっている。残念ながら、私にはこの作品からは、それを見つけ出すことが出来なかった。ああ、そうだ。第二の犯行の時間がいつの間にか変わっていたのだけれど、何かのミスだろうか。それとも、私が何か見落としたのだろうか。

僕は、名助手と呼ばれる者なのです

小林新。名助手という単語を連呼しておきながら、何かしたのだろうか。影薄すぎではないだろうか。それとも、見えないところで活躍していたのだろうか。それを気付かせないことが、名助手なのだろうか。まあ、続きがあるような終わり方なので、そのうち日の光を浴びることが、あるかもしれない。というか、新人賞なのに、いかにも続きがありますよ、的な終わり方をするのは何なのだろう。やはり、加筆修正しているのだろうか。