失踪HOLIDAY
ご注意ください。致命的なネタバレがあります。
- 作者: 乙一,羽住都
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2000/12/26
- メディア: 文庫
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わたしもラーメン食べたかったよう
ぼくと雪村と子猫。彼らの日常が描かれる。小さな幸せ。些細な出来事。読んでいるだけで、心が温まる。安らぐ。徐々にお互いの好みがわかってくる。心が通じ合う。雪村はなかなかに頑固である。そしていたずら好き。子猫のようだ。
謝りたくても、彼はもういない
彼らの日常を書くだけではダメかと思ったのか、こちらを書きたかったのか、両方なのか、それ以外の何かなのかはわからないけれど、この作品の山場。ミステリ部分。解決後、ぼく、または、雪村の心境に変化が生じたからか、時間切れなのか、作者の都合なのか、わからないけれど、雪村がいなくなってしまう。というか、子猫は何かを象徴していたのだろうか。わからない。
わたしが心から好きななったものの一つじゃないか
雪村の、最初の、最後の、告白。彼女が撮っていた写真の数々。その理由が、わかる。雪村が愛した世界を、彼も愛せるだろうか。彼は変われるだろうか。絶望感を拭えるだろうか。おそらく、カーテンを開き、窓をあけた彼は、際限なく広がるこの美しい世界を、はるか遠くまで続く道を、その一歩を、踏み出すはずだ。嫌いになど、ならないはずだ。もう孤独に死ぬことを、切望しないはずだ。雪村の行かなければいけないところが何処かはわからないけれど、際限なく広がるこの美しい世界の先であればいい。それが彼の道の先であるならば、こんなに素敵なことはないではないか。
――――である
が口癖の、人を信じることの出来ない、人の温かみをまだ知らない女の子、ナオの話。失踪HOLIDAY。家出のきっかけになった、部屋に入った犯人も、結局は自分の心。まあ、それに便乗して漁夫の利を得た人達もいるけれど。彼らは、なかなかにしたたかだ。それでも、一番得たものが大きかったのは、ナオだろう。