MAMA

ネタバレがあります。ご注意ください。

また、支離滅裂な感想のため、意味不明なものとなっている可能性があります。

ご了承ください。

MAMA (電撃文庫)

MAMA (電撃文庫)

さぁ……お前の二つ名を聞こう

その世界観やら設定やらから、そこはかとなく、「ICO 霧の城」のような雰囲気を、醸し出している。そんな中で織り成していく、女の子と人喰いの物語。

――……サルバドールの落ちこぼれ

落ちこぼれ→疎外→孤独→大切なものを見つける。という流れは、ありふれているけれど、それを感じさせない描写は秀逸。

女である、ということ

有川宏といい、紅玉いづきといい、女性作家の描く女性キャラは本当に、強い。けれど、強すぎる想いは、時に視野を狭くする。トトがここから、どういう成長を見せるのかが、楽しみだ。しかし、ヘブンズ・イヤーとは、なんとも皮肉な名前を考えたものだ。と、感心させられてしまった。

キミは死なないよ。ボクが守るもの

トトを縛る、鎖の先端。その鎖を構成しているのは、孤独、想い、そして何より、ホーイチとの時間。けれど、この鎖が、二人を繋ぎとめていたものなのかもしれない。この鎖を断ち切るきっかけはゼクン。彼が死ぬかもしれない状況に陥って、気付く。いや、本当は気付いていたのかもしれない。けれど、ホーイチとの関係が崩れてしまいそうで、気づかない振りを、していたのかもしれない。それが彼女の、弱さ。けれど、それでも

ねぇトト。あたしの独り相撲だとわかっていたけれどね。あたしは、あたしなりに。

――貴方のお友達でいたつもりなのよ

と、言ってくれる人がいるではないか。この言葉を放ったティーランは、そんなトトの心境を、見抜いていたのだろうか。だから独り相撲だと、言ったのだろうか。だとしたら、それはとても、悲しいことだろう。けれど同時に、それはとても、愛しいことであると、思う。あらすじの「愛しい」という字は、おそらく、「悲しい」と、かけてあるのだろう。

その赤子の名前を――トトはきっと、生まれる前から、知っている

はっきり言って、何故MAMAという題名が付けられたのかが、全くわからなかった。だって、そうではないか。トトとホーイチの関係は、母と子というよりは、子供と子供が拾ってきた子犬のような関係にしか、見えないのだから。けれど、なんてことはない。この二人の関係を含めた全てが、最後に繋げるための伏線でしかなかったのだから。全ては、その未来へと収斂していく過程でしかなかったのだから。おそらく、MAMAという物語は、ここから始まっていくのだろう。と、そう思った。それとも、もしかして、彼女たちが成長していく様を、それを見守っている読者自身が、MAMA、ということなのだろうか。

じゃあ。人を喰えない人喰いは――……?

そういえば、この答えって、出てきただろうか。見落としたかな。まあ、いいか。おそらく、人を喰えなくなったのではなく、人喰いでなくなったのではないだろうか。人喰いから、人になったのではないだろうか。人の心に、その暖かさに、初めて触れて、彼は変わっていったのだろう。心の在り方が、変わっていったのだろう。もしそうだとするならば

多分、きっと、自分たちの関係は間違っていたのだろう

と、トトは言っているけれど、ホーイチにとってそれは、とても大切なものだったのだろう。だとしたら、その頃のトトも、間違っていただけではないのだと、大切なことでもあったのだと、そう思えるではないか。救われるではないか。そして、心だけでなく、体も、人になりたかったのではないだろうか。トトと同じ時間を、過ごしたかったのではないだろうか。だから、ゼクンに勝負を持ち寄ったのではないだろうか。けれど、もう、人喰いの本能は残っていなかったのではないだろうか。だからゼクンが残ったのではないだろうか。それでも、その心だけは残っていて、だから最後に、形となって、現れたのだろう。

そういえば、勝負の後に出てきたゼクンのことを、実はゼクンの振りをしたホーイチなのではないだろうか。と、疑ってしまった自分が情けない…

最後に、どうしても気になった点が二つ、ある。一つ目は、妹の存在意義。さて、何を象徴しているのやら。もう一つは、ゼクン。というか、ゼクンの挿絵。ないのだけれど。何か、見落としただろうか。わざと載せていないのだとしたら、どのような意図が、あるのだろうか。

さてと、前作が積んであるので、読もうかな。と、思った。

追記

今更になって気が付いた。妹が何を象徴しているか。まあ、あっているかはわからないけれど。というか、そもそも、正解なんてあるのかさえ、わからないけれど。いや、それはないか。とにかく、妹が何を象徴しているのか。もしも、兄がホーイチの心を形にしたものだとしたら、妹はトトの心を形にしたものではないだろうか。ホーイチと同じ時間を過ごせるようになったとはいえ、人には寿命がある。そして当然、その順番は、親の方が早い。ホーイチを一人にしたくないという、MAMAの、想いではないだろうか。もしかしたら、妹の名前は、ママ、なのかもしれない。