Under 異界ノスタルジア

若干酷評しています。ご了承ください

under―異界ノスタルジア (電撃文庫)

under―異界ノスタルジア (電撃文庫)

狂気と悲しみに彩られたサイコミステリー

と帯に書いてあったけれど、ミステリーは飾り程度でしかない。こういう先入観を与えられると、どうも引きずってしまう。まあ、これは、作者が悪いわけではないのだけれど…それにしても、この表紙はなかなか良い。それだけに、もっと内容に沿ったキャッチフレーズにしてほしかった。

バタン。ロッカーが、閉まる

前半はホラー。序幕を読んだ時点ではもろMissingだった。けれど、ホラー物として致命的な部分がある。怖くない。間の取り方が良くないのかな。減り張りなく、滔滔と文章が進んでいくため、全てが一緒くたになってしまっている感じ。いけないとはわかっていても、どうしても、Missingと比較してしまう。先駆者がいるので、瀬那和章独自の何かを見せてほしかった。まあ、私が見つけられなかっただけかもしれないけれど。

あんたの影になんか、もう負けねぇよっ

後半は異能バトル。まあ、本書のほとんどが異能バトル。一部を除き、私はバトル物が得意ではない。というか、好みではない。なので、バトル部分に関しては、パス。ということで、黒幕の動機について。これについては、一言で表せる。ありきたり、だ。けれど、これは仕方ないのかもしれない。動機を考えるのは本当に難しいのだから。おそらく、こればかりは経験でフォローできないためであろう。作者にしても、読者にしても。動機というのは、安易なものだとオリジナリティーに欠け、奇怪になりすぎると理解されない。失礼を承知で言うけれど、本書は前者である。けれど、この世界観からすると、確実に後者の方がしっくりくると思う。綺麗な方へと纏めてしまった感じが、した。そこが少し残念、かもしれない。それでも、文章の構成力や表現力で、そのありきたりに説得力を持たせることは出来る。まあ、新人にそこまで求めるのは酷だろう。なので、今後に期待……出来るだろうか。おそらく、続刊を出すことを前提として、加筆修正したのだろう。けれど、そこに、蛇足感があるし、間延びしてしまった感じもする。明かされなかった謎が気にならないのも致命的だ。この一冊の中だけで何か驚愕できるものがあったのならば、今後に期待できたのだろうけれど。

私は、本当に書きたいものに気づきました

あとがきを読んで気が付いたことがある。やはり、瀬那和章はホラー物が苦手なのではないだろうか。と、思った。対して、バトル物は好きなのだろうと思った。そして同時に思う。作品関係者や読者に対しての謝辞だけで、あとがきの大半を費やしてしまう作者がいる中で、このようなあとがきは大変貴重だと。そう思った。