氷菓

お気をつけください。かなりネタバレしています。

氷菓 (角川文庫)

氷菓 (角川文庫)

省エネ

これが主人公である折木奉太郎のキャラでありその信条。うーん、いい設定だ。私は熱い主人公よりも、少し冷めた感じの主人公の方が好みなので愛着が持てる。「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に」。か。立派だ。私の場合、やらなければいけないことは後回し。なのだから。

わたし、気になります

ヒロイン千反田の口癖であり、この言葉が彼女の全てを表している。なんという好奇心。彼女とこの言葉の前には奉太郎の省エネなど微塵も通用しない。振り回される。ああ羨ま…いや、なんとも気の毒である。そして、自分のことには一身上の都合といって話を逸らす。したたかだ。

そう、折木さんなら、もしかしたら…

古典部の活動かどうかはわからないけれど、日常に起こるちょっとした謎を奉太郎が解いていく。そして、その奉太郎を見ている千反田。変化する心境。明かされる一身上の都合。物語はカンヤ祭の謎へ迫る。ディスカッション。姉貴からの電話。そして氷菓

…いい加減、灰色にも飽きたからな

クライマックス。普段は熱くならない奉太郎が熱くなる。そして、氷菓の意味。この意味の謎が解けたとたん、物語は一気に収斂する。何故関谷が文集の名前をこれにしたのか。ああ、これが関谷の心情だったのか。と思うと同時に、氷菓の意味を知った人の心情にもなりうるのか。と思う。そして、読者の心情。衝撃。ああ、これは奉太郎でなくとも熱くなる。目頭も熱くなる。

本当にわかっていないのか?

はっきり言って、私は最後の最後までわからなかった…そして、その謎が解ける一文を読んでもまだわからない…なのでそこから更に調べるという始末。私は高校時代いったい何を勉強していたのだろうと思えるほどの知識の薄さ。米澤穂信は私のような読者がいることを想定して氷菓命名したのだろうか。もしそうであるのならば…私にとっては二重の意味で氷菓である。

一つアドバイスをしてあげる

姉貴の話。物語の途中、度々干渉してくるこの姉貴。なにやら重要な配置に置かれていそうだとは思っていたのだけれど、最後の最後でとんでもないことが判明。気が付かなかった…ある意味において、この本最大のミステリーかもしれない。最初からそのつもりだったのか。「なんといっても秋がいい」。か。それでもまあ、弟想いだということもわかったし。いい姉貴だ。そしてこの言葉。「きっと十年後、この毎日のことを惜しまない」。奉太郎の意識が変わり始める。そして私も、今この姉貴のように在れているのだろうか。と、考えさせられた言葉。だから、私は彼女に対して奉太郎と共にこの言葉を送ろう。アドバイスをありがとう。

…ううん、うまいんじゃない。わたしが好きなのね。

とは、井原の言葉。私は真面目な学生ではないため、文章の上手い下手はわからない。それでも、米澤穂信の文章が好きである。文体が好きである。構成が好きである。評価は星4つだけれども、この作品を感想1冊目に持ってくるだけの思い入れがある。米澤穂信。彼の本がもっと読みたくなった。古典部の今後も知りたくなった。最後は千反田と共にこの言葉で終わろう。わたし、気になります